僕は星が好きだ。理由は分からない。人は本当に好きなものは理由などないのだ。美しいものは美しい。ただそれだけだ。星に魅せられて,ほぼ50年になるだろうか。
今,ZTF(ズィー・ティー・エフ)彗星が,観られるようになっているそうだ。と言っても双眼鏡が必要なクラスらしいけれど,それでも久しぶりの彗星だ。是非とも観たい。
ああ,あの頃の自分が甦る。
星への初恋
僕が初めてそれと意識して夜空を見上げたのは,小学校4〜5年の頃だっただろう。その日小学校の授業で習ったばかりのオリオン座を見つけては歓喜したものだった。
僕が初代の天体望遠鏡を買ったのは,その少し後のことである(と言っても親に買ってもらったのだけれど)。月や,木星・土星など,美しかったことを覚えている。
しかし当時は星雲・星団の存在なんて知らなかったものだから,すぐに飽きてしまって、天体望遠鏡も長い間ほこりをかぶったまま眠らされていた。
二度目の一目惚れ
中学校を終わる頃,僕は夜道を歩くのが好きになった。夜の学校や山や神社は,昼間見えなかったものを僕に見せてくれたし,考える時間や心の余裕を与えてくれた。当時の僕にとって夜は友達であり,その静寂は心の師であったのだ。
そのような生活を送っていたとき,ふと見上げた夜空を星が流れていった。それはいくつも,いくつも・・・ 。 まるでこの世が終わってしまうかのように。熱量死に向かう宇宙からどこかへ逃げ出すように。
銀河に浮かぶ白鳥をよぎってはしる流星に,感嘆の声を上げたのが,まるで昨日のことのように思い出される。
時に高一の8月,僕の見た黙示録的光景は,かの有名なペルセウス流星群であった。
それは星空への二度目の一目惚れの瞬間であった。以降2年間,僕の常軌を逸した生活が続くことになる。
夜は友達だった
夜の12時を過ぎてからが最も充実した時間となった。その頃になると星への知識も増えており,2代目の天体望遠鏡も手に入れた。2代目はアルバイトをして,自力で購入した。これは胸を張れる。
学校から帰ると,夕方寝をする。起きてから,2時間ほど働く。気が向いたら勉強をする。そして,真夜中の1〜3時ぐらいまで,寒空の中,星を見る。よくぞこんな生活を送れたものだと感心する。(深夜ラジオも友達だった。テレビはあまり観なかったけれど,深夜ラジオはよく聞いたなぁ)。
しかし,寒厳のなかに輝く星々と,漆黒の宇宙に秘められた星雲・星団という名の宝石たちには,僕をそうさせるだけの魅力は十分に持っていた。
高校時代の2年間が,僕が最も星々と近かった時代である。あの生活を続けていたならば,僕はひとかどのプロフェッショナルになっていたかもしれない。その人生もあったのだろうね。
選ばなかった僕の未来。でもそれはそれで,悔いはない。今の僕も嫌いじゃない。
今の僕と星たち
3代目の望遠鏡を購入したのは,20年以上前になる。がしかし,忙しさに鎌かけて,あまり使われることがなかった。
なんだかんだいって,僕は本当に忙しかったのだ。
3代目が使われるのは特別なイベントの時ぐらいだった。それでも,時々ではあるが,楽しい思いをさせてもらった。
この12月をもって退職した。誘惑に駆られて,もっと大きな4代目を購入してしまった。(やはり煩悩多き僕だ)
残念ながら,あの頃のように星を見ることはおそらくないだろう。それでも僕は星が好きだ。やはり僕らは友達でいたい。ずっと一生友達でいたい。
リタイア後の人生,楽しみは尽きない。人生は長いのだ。
終わりに
上の写真は,天体望遠鏡の接眼部に,iPhoneのカメラを当てて撮影したものだ。その道の玄人が見れば,「何やってんだよ。お馬鹿さん。」と言われそうだ。眼視ばかりで,撮影はしてこなかった。それでも,最近の「皆既月食による天王星食」を撮ることはできた。
せっかくの機会である。天体写真も本格的にやりたいな。
よいカメラが欲しくなってきた。
やはり煩悩多き僕である。
P.S 懐かしい僕です。文体が違いますね。