お久しぶりです。本日は健康寿命について思うことです。
以下の表は,2019年(令和元年)の平均寿命と,健康寿命と,その差(不健康期間)を表しています。
平均寿命 | 健康寿命 | 不健康期間 | |
男性 | 81.14歳 | 72.68歳 | 8.73年 |
女性 | 87.45歳 | 75.38歳 | 12.07年 |
これってどう言う数字なのでしょうか。
健康寿命が短いです。
不健康期間が長いです。
豊かな老後は短いと言うことなのでしょうか。
私の感覚からはかなりかけ離れています。
昨年一年間地域の「本当家」の仕事を務めさせて頂きました。「本当家」とは,地域の祭礼,神事,行事のお世話係の長であります。
その仕事を終えて感じたことは,この地域のお年寄り(失礼)は本当に元気だと言うことです。
上の表とは全く違う印象です。80歳近い方々が,元気に元気に活動されています。
以前から健康寿命の数字については違和感がありました。
そして昨年の活動でその疑問は確信に変わりました。
「健康寿命」の設定値は,明らかにおかしいです。
考えるべきは「平均余命」「健康余命」です
健康寿命の求め方
そもそも健康寿命とは何なのでしょうか。
健康寿命の出し方は以下のようになっています。
「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に対し、「ない」と回答した人を健康、「ある」と回答した人を不健康とそれぞれ定義し、年齢別の健康・不健康の割合を求めた上で、生命表と合わせて健康寿命の平均を算出しています。
厚生労働省実施「国民生活基礎調査」
「日常生活」とは、たとえば「日常生活の動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)」、「外出(時間や作業量などが制限される)」、「仕事、家事、学業(時間や作業量などが制限される)」、「運動(スポーツを含む)」等、幅広いです。
要するに,アンケートを行い,それに調子が悪いと答えた人を,
「不健康」としています。
このアンケートは,厚生労働省による「国民生活基礎調査(大規模調査)」で,行われます。
これがそのアンケートの「健康寿命」に関する部分です。
この質問5が健康寿命を決めています。
アンケート全文についてはこちらをご覧ください。
さて「健康寿命」です。このようなことがあるかもしれません。
・今までゴルフに行っていたが,以前ほどゴルフに行かなくなった。日常生活(運動)に影響が出た。
・老眼で目が見えにくくなった。日常生活(仕事)に影響が出た。
・今まで8時間働いていたが,年を取って,それだけの時間働くのがしんどくなった。日常生活に影響が出た。
これらは,加齢によるごく当たり前のことでありますが,「不健康」として扱われているかもしれません。
このような結果が,健康寿命を引き下げているのではないのでしょうか。
「平均寿命」 「平均余命」 について
平均寿命とは,0歳児が何歳まで生きるかを表した数字です。
別の言い方をすると,0歳児の平均余命であります。
こどもの死亡率が高い国(時代)であれば,平均寿命は大きく下がります。
0歳児のこどもが一人,90歳の高齢者が一人亡くなったとします。
この場合平均寿命は45歳になります。
0歳児2名,90歳一名がなくなった場合は,平均寿命30歳になります。
こどもの死亡率の差が,平均寿命に大きな影響を与えます。
幸い現在の日本は,こどもの死亡率は極めて低いです。
その結果平均寿命はかなり高くなります(世界一です)。
それでも、悲しいけれど,若くして亡くなる人は居ます(悲しいなぁ)。
平均はあくまで平均です。
自分が後どれくらい生きられるのか。大事なのはそこです。
その時に観るべき数字が,「平均余命」です。
「平均余命」とは,「その年齢の人が」あと何年生きられるかを表した数字です。
例えば65歳の男性は,2019年時点で,平均であと19.83年生きられます。
すなわち65+19.83=84.83歳まで生きることができます。
最初の表であげた男性平均寿命の81.14歳よりも長生きしますね。
65歳女性の場合も上げておきましょう。
その場合の平均余命は24.63年,
すなわち65+24.63年=89.63歳まで生きるようになります。
最初の表であげた女性平均寿命の87.45歳よりも長生きですね。
2019年 厚生労働省 「簡易生命表」より
自分がどれくらい生きられそうなのか。
それを考える場合は,「平均寿命」ではなく,「平均余命」で考えるべきです。
「健康余命」について
「国民生活基礎調査(大規模調査)」によるアンケートで「健康寿命」を出していると言いました。
そのアンケート結果から,「健康寿命」ではなく,「健康余命」を出すこともできます。
アンケートの「健康寿命」に関係する部分を載せましたが,これは6歳以上の日本国民の答えです。
要するに「健康寿命」とは,6歳以上の「平均健康寿命」であります。
今の自分がいつまで健康でいられるかでは無いのです。
上の章で「平均寿命」ではなく「平均余命」で考えるべきだと言いました。
同じ事が「健康寿命」にも言えます。「健康寿命」ではなく,「健康余命」で考えるべきです。
今の自分があと何年健康でいられるかが大切です。
65歳での「平均余命」と「健康余命」とその差から出る「不健康期間」を載せます。
平均余命 | 健康余命 | 不健康期間 | |
男性 | 19.83年(84.83歳) | 14.43年(79.4歳) | 5.40年 |
女性 | 24.63年(89.63歳) | 16.71年(81.71歳) | 7.92年 |
この数字であれば,実態を比較的反映しているように思えます。
「不健康期間」がずいぶん短縮されます。
実態に近づいたように思います。
語るべきは,「平均余命」と「健康余命」です。
それでも「健康余命」は,アンケートによる集計結果です。
このアンケートについての客観性については,「健康寿命」の章で述べました。
客観性や,科学的データの裏付けのない,単なる主観にすぎません。
より客観的なデータ 「要介護2以上の認定」で判断する
より客観的なデータとして,科学的・統計的データがあります。
それは「要介護2以上の認定を持って,不健康と判断」する方法です。
要介護の正確なデータはそろっています。
自治体の介護サービスの根幹に関わる,極めて客観的で,科学的な統計データです。
(要介護1の認定はちょっとあやふやな感じもします)
要介護2ってどういう状態?
要介護2の状態について厚生労働省は以下のような具体例を挙げています。
- ・買い物や簡単な調理、爪切りなどの身の回りのこと全般に何らかの介助が必要
- ・起き上がりや歩行が自力ではできない
- ・排泄や入浴で一部、もしくは全般的に介助が必要
- ・問題行動、理解低下がみられる
このような状態になったとき,要介護2と認定されます。
自治体でのサービス受給に関わることなので,かなり客観的で,信頼できるデータとなります。
アンケートの自己申告とは段違いの信頼性です。
要介護2以上で「不健康」とする場合の「不健康期間」
それでは,この方法で,65歳での平均余命と合わせて表にしてみます。
「自立生活期間」とは,要介護2以上の認定を受けていない期間です。
(あくまで平均であることは考慮してください。)
「自立していない期間」とは,平均余命から要介護2以上の認定を受ていない期間を引いたものです。すなわち要介護2以上の期間(不健康期間)です。
それでは65歳での平均余命と自立生活期間データを表にしました。
(数値は小数点第一位にそろえております。)
平均余命 | 自立生活期間 | 自立していない期間 | |
男性 | 19.8年(84.8歳) | 14.6年(79.6歳) | 5.2年 |
女性 | 24.6年(89.6歳) | 19.0年(84.0歳) | 5.6年 |
多分人生は,もっともっと有意義に過ごすことができる
こうなってくると,統計的にかなり意味が違ってきます。
特に女性の場合は全く違った世界が見えてきます。
「短い(と感じさせられる)健康寿命」に恐れることはないと思います。
豊かな人生は,世間が言うよりも,もっともっと長いです。
「健康的な人生を送るために、今どのように生活するべきなのか。」
を考えることよりも、
「充実した人生を送るために、今どう生きるべきなのか。」
を考えることが大切だと思います。
「健康寿命」を真剣に語るならば,このデータを用いるべきだと思います。
統計とデータは正確であるべきです。
統計の取り方(指標の用い方)で色々な結論を導き出すことが可能になります。
ちょっと前,「老後2000万円問題」が物議を醸しました。
あれも多分データの使い方で,違った結論を出すことは可能です。
日本国が出す,そして,国民生活に直結するような報告は,
客観性のある,科学的なデータの裏付けの元に出してほしいものです。
主観的なアンケートで,人生を語らないで欲しいなぁ。